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化学系大学院入試に使える良書紹介

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院試に向けて何でどう勉強しましたか?と聞かれる事が多くなってきたので、その回答のひとつとしてこの記事を書いておく。
私は化学系だったので、それに特化したものだけを。

基本的には学部の授業で指定されている教科書を使えば間違いないが、専門とする科目(進む研究室の分野)はそれ以上に勉強して院試程度の問題であればほぼ完答できるくらいでなければ修士以降、研究を進める上で分からない事が頻発して時間が足りなくなってしまう恐れが高い。

有機化学

基本となる教科書はマクマリー・ジョーンズ・ボルハルトあたりかと思う。それに加えて合成/機能分子/高分子に関わらず有機化合物の合成を行うラボに進むなら更にウォーレン・福山研の演習A問題くらいはやって置いた方がいいだろう。

ウォーレン有機化学〈上〉

ウォーレン有機化学〈上〉

演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで

演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで

この分野はとにかく手を動かして電子の流れを把握することが肝要。こまごまとした量子論・物理化学的議論は後回しでも構わない。有機化学を専攻しようとする学生は物理が苦手なことが多いので、極端な話、困ってから勉強しても事足りる。
演習に関しては多くの成書があるが、教科書の章末・演習問題だけで十分な量があるので、追加で何かを購入したりする必要はない。答えが無くてこまってるならラボの先輩や教員に聞けばいい。それで答えられない研究室ならそこへの進学を考え直したほうがいいかもしれない。

無機化学

こちらの基本はシュライバー一択ではなかろうか。有機化学ほど物理から逃げることが出来ないので、物理化学と平行して勉強をすることをおすすめする。むしろ、無機化学で細かなところに納得ができないなら物理化学をしっかり理解してから取り組んだ方がいい。錯体化学系の研究室だと、配位子の合成が必要になって結局、有機化学が必要になるし、固体化学系の研究室なら物理化学が出来ないと詰む。院試の無機化学ができないで詰むことはあまりないと思うので、比較的後回しにしても大丈夫な科目だったりする。

分析化学

これもクリスチャンくらいしか体系的な成書がないように思う。ただし、無機化学と違って計算が主であるのでひたすら演習をする必要がある。演習本のもっともおすすめは竹田満州雄の化学演習シリーズ。ほかの分野もこの演習シリーズがあるが分析化学が最も役に立つ。

無機・分析化学演習―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)

無機・分析化学演習―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)

機器分析などの問題もたまに出題されるが、院試レベルではそれほど難しいものはないので特に問題ないと思う。ただし、研究室でよくつかう装置については院試の後にしっかりと勉強すべし。

物理化学/量子化学

物理化学の教科書としてはアトキンスを使っている学部が多いのではないだろうか。ただ、アトキンスは翻訳がひどい上に天下り的な式導出が多いので、個人的には好きになれない。おすすめはバーローかマッカーリ・サイモンの物理化学である。

バーロー物理化学〈上〉

バーロー物理化学〈上〉

バーロー物理化学〈下〉

バーロー物理化学〈下〉

物理化学―分子論的アプローチ〈上〉

物理化学―分子論的アプローチ〈上〉

物理化学―分子論的アプローチ〈下〉

物理化学―分子論的アプローチ〈下〉

注意しなければならないのは、サイモンとアトキンスでは振動準位の基準が違う点だ。どちらにしても誤りではないが、サイモンの方式が一般的なように思う。
レーザーを扱ったり、分光学的な研究室に進む場合はこれに加えて大学員講義物理化学をやっておくと間違いない。ただし、全分野を網羅するのはかなり骨が折れるので、必要な章だけを抜き出してやっておくのがいいだろう。

大学院講義物理化学I(第2版): 量子化学と分子分光学

大学院講義物理化学I(第2版): 量子化学と分子分光学

反応速度論や熱力学に関しては演習が非常に重要である。よって、教科書の演習問題だけではなく演習本を一冊くらい仕上げておくのがいいだろう。私のおすすめは裳華房出版の基礎化学選書であるが、残園ながら速度論は絶版になっている。

化学熱力学 (基礎化学選書)

化学熱力学 (基礎化学選書)

化学反応の速度と平衡 (1971年) (基礎化学選書〈6〉)

化学反応の速度と平衡 (1971年) (基礎化学選書〈6〉)

生化学

生化学に関しては私の経験にないので良書を薦めることができない。一般的にはヴォートだと思うが、中身に関しても深く勉強したわけではないので細かなことは言えない。


さいごに

全科目に共通して言えることは、大学入試と違って試験が終わった後も常に知識にアクセスできる状態を保たなければ意味を成さないということだ。つまり、院試というのはその先の2年ないしは5年の研究教育に必要な知的基礎体力をつけるためのものであるから、試験が終わったら忘れました、というのでは意味がない。よって、試験前数週間で詰め込むよりは時間的余裕がでてくる学部3年後期あたりから染みこませるようにじっくりと時間をかけて学習に取り組んでもらいたい。

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