学振を辞めて会社に入った話
大学を辞めた。
それに伴って学振も辞めた。
一ヶ月ほど無給の期間があったのだけれど、無事に就職が決まった。もちろん、新卒なんかじゃなく、中途採用の枠になんとかねじ込んで貰った形だ。
幸か不幸か、私のいた研究分野ではかなり有名な外資の機器メーカーの技術営業マンとして働いている。
事の顛末を書けばただそれだけのことだけど、その中間には実に様々なことがあった。
このブログで最もアクセスの多い鬱と研究室の話のように、私自身が精神的に追い込まれてダメになってしまったのだ。明日は我が身というのをこれほど明確に感じたことはない。
そうすれば、あとは坂を転がり落ちるだけ。実験はとまり、データはとれず、学校にも行けなくなった。
今になって思えば、論文がほとんど無くても学位を取って企業で勤めている人だってたくさんいるし、何も辞めてしまうほど追い詰められた状況ではなかったのだろう。
それでもやはり、あの研究室の環境というのに私は耐え切れなかったのだ。そこに私の弱さがあり、研究を続ける上でのウィークポイントがあったのだ。
学振を辞退して大学を辞める決断をしてからも、未練がましく研究職のポストをしばらくは探した。どこも博士課程を中退したような奴は採用してもらえなかった。修士課程を含めて4本ほど論文は出版されていたし、自分の研究実績には自信があったのだが、学位を取らずに大学から逃げ出した私に研究職としての居場所はどこにもなかったのだ。
登録していたエージェントから知ってる名前の会社の営業を募集しているというメールを受け取って何も考えずにエントリーしていたのもそのせいかもしれない。
それが幸い、自分が研究でつちかってきた技能や知識を活かした現職につながった。拾う神はふとした時に顔を出して気まぐれに助けてくれる。
業務上貰う名刺に理学博士だとか工学博士だとか書かれていることが多くて、まだ少しはひっかかるところはあるけれど、楽しく働いています。
働いてわかったことだけど、学振研究員なんて、名誉もなければ給与(厳密には違う)も最低賃金切ってるんじゃないかと思うくらい安いし、社会ではありえないくらい不安定です。目先の小さな研究費につられてせっかく自由に研究をたのしめる三年間を棒にふるだけだとおまもいます。
学振を取ることだけを目標にしている人は、こんなわたしの失敗をすこし参考にして貰えたらなぁと、愚考する次第です。
それでば、今日はここまで。