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不競法・著作権法における権利侵害の非親告罪化

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一昨年あたりから続いていたTPP交渉も次々に決定事項が増えてきました。
今朝未明、著作権侵害の罪が非親告罪になる見込みが高いことが報道されました。
先日の特許法改正時には、不正競争防止法も改正され、一部の罪が非親告罪になっています。

headlines.yahoo.co.jp

親告罪非親告罪


そもそも、親告罪非親告罪って何でしょうか。


みんな大好きwikipediaによると、

親告罪(しんこくざい)とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪をいう。告訴を欠く公訴は、訴訟条件を欠くものとして判決で公訴棄却となる。
wikipedia

となっています。
告訴とは、犯罪被害者が犯罪の存在を司法機関または警察機関に訴え出て、裁判を求めることを言います。
つまり、親告罪とは被害者が訴え出なければ罪に問われない罪の事を言います。犯罪は等しく罰せられるべきですが、なぜこのような制度があるのかというと、訴え出ることで被害者側にさらなる負担や被害が生じるおそれのある犯罪を想定しているからです。
刑法には、名誉毀損や侮辱、強姦や強制わいせつの罪が非親告罪として規定されています。
憲法82条では

第八十二条  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
○2  裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

とされていますので、上記の罪を世間にさらけ出すのは避けたい場合にも裁判が行われると、被害者にあまりにも酷ですね。

不競法における罪

不競法では、営業秘密の不正取得又は開示、若しくは営業秘密の不正取得が介在した事を知りながら当該営業情報を使用又は開示する行為と裁判所が発する秘密保持命令違反の罪が親告罪として規定されていました。
平成27年7月の改正で上記違法行為は全て非親告罪になり、もろもろ罰則規定が強化されています。(後日別の記事で書こうと思います)

秘密にかかる違法行為が親告罪とされていたのは、公開法廷で営業秘密が開示されると、業務に支障を来すおそれがあるからです。今回の改正は、不競法違反行為の悪質さが深刻になってきたため、抑止力強化の点と摘発件数の向上を狙っています。
ただちに「なんでもかんでも警察に暴かれる!」というわけではないですが、不競法で行政側の権力行使範囲が広がっているので、警察法検察庁法でいきすぎた捜査・摘発がないようにしてほしいところです。

著作権法における罪

記事によると、

「TPP交渉国で制度がないのは日本とベトナムの2カ国だけで、導入の方向は避けられない」

らしいのでなんらかの形で非親告罪になる可能性は極めて高いでしょう。
一方、同じく記事中で

著作権法の専門家は、日本の国内法では、教育や研究、批評など公正利用を著作権侵害罪の適用範囲外とする一般規定がないため、非親告罪を導入する場合には乱用を防ぐ法改正などが必要だと指摘している

と書かれているが、著作権法には

第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

第三十三条  公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同じ。)に掲載することができる。

と記載されている。私の読み間違いか、記者の取材ミスか、この専門家が勘違いしているのかわかりませんが(私のミスの可能性が最も高いですが)、おそらく記事で懸念している事態にはならないでしょう。

現行法で非親告罪とされている著作権法における罪は120条の2 第1号と秘密保持命令違反だけです。

著作権法120条の2 第1号
技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者

不競法とはうってかわってあまりにも抑止力に欠いた規定だと思います。現状、ネットには著作権侵害の漫画やアニメ、ゲーム、小説などが反乱しています。警察がこれらを見つけたとしても権利者からの申立がなければ立件できません。商標法違反の海賊製品はただちに刑事罰の対象になるにも関わらずです。しかも著作権の場合、支分権ごとに譲渡されていたりするので、権利者をはっきりさせるのにも手間がかかります。この辺はTPPとか関係なしにただちに非親告罪化したほうがいいのではないでしょうか?

他にもTPPには著作権の有効期限を延ばすとかいう話もあったりするので、実際の法案が出てTPPが批准されないことにはコメントしづらい点が多々あります。今後の議論の様子を見守りたいと思います。

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