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三角関数は誰の為に

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 「女の子にサインコサインタンジェントを教えてなんになる」って話ですが、「女の子」のくだりは別にして、まぁそういう考えの人が現れても不思議ではないよなって印象です。
 実際問題、義務教育を終えた人のうち、学問から離れた後に三角関数を必要とする人なんてごくごく少数で、割合にしたら数%でしょう。高校進学率が97%で*1三角関数は数Iで登場するので、ほぼすべての日本人が一度は三角関数を習っているということになるわけです。それで、たった数%の人のために全員があんな意味のわからん数学を勉強する必要があるのか云々の話になります。

三角関数はいるの? いらないの?

三角関数不要派」はの主張はこんな感じ。
・使う人だけ学べばいい。
三角関数より社会福祉や簿記(実社会で使うもの)を学ぶべき

 確かにその通りなんだなぁ。使わない人に教えても教育コストがかかるだけだし、実社会で直接使う知識を教えた方が、生徒側にとっても利益がある。
 こんなのけしからん! って怒ってる人の意見を見てみると、「使う使わないの問題じゃない」とか、「私は知ってて役に立った」とか、「三角関数がないと世の中回らない」とかってのが大半に思えます。これらの意見に対してはそれぞれ、「使わないじゃん」「それは貴方の個人的なものでしょ」「私は知らないけど世の中回ってる」と、同じレベルで反論されてお互いにわかり合えないだけじゃないでしょうか。

 以前のエントリーでも書いたけど、自分と同じ意見を持った人に同意してもらっても意味ないんですよね。それは議論じゃないし、建設的じゃない。mitsukix.hateblo.jp

困ったら基本から

 こうなると、巨人の肩の上に立って物事を考えてやらないといけません。行政問題ですから、行政の基本方針からいきましょう。基本は「最大多数の最大幸福」です。期待値が一番大きくなるように行政を進めましょうってことですね。学校教育で三角関数を教えるメリットとデメリットを挙げていきましょう。

教えると(現状だと)・・・・・・
・工学系/数物系に進む人にとって大きなメリット。国としての研究力・工業力UPに繋がる
人生で一切三角関数を使わない人にとっては時間の無駄。若い時間は貴重。
・数学アレルギーになる人が現れる。

教えないと・・・・・・
・(代替として)実用的な知識を教えられる。国民の生産性UP?
工学/数物系の人材が減る。エンジニアの数が減って関連するサービスのコストが上がる。
・数学を知らない人が大多数になる。

 穴だらけの列挙ですが、大体こんな感じ。
 私がこの問題で比較するべきだと思っているのは、下線を引いたところ。つまり、デメリットを比較してどっちがいいか考えるべきだと思っている。だって、三角関数を教えるにしろ、代わりに別の事を教えるにしろ、それなりに実入りはあるわけです。だったらどうして三角関数にこだわるのかを考えた方がいい。

三角関数が必要な人は

 現状の社会で三角関数が必要となる仕事に就いている人は(人口全体で見ると)それほど多くはないでしょう。ではその「三角関数人口」はどんな職種の人でそれらが減ったらどうなるかを考えます。大半がエンジニアで残りが学者ってところだと思いますが、エンジニアが減れば国としての工業力が落ちて、電気・通信をはじめとして全てのサービスが劣化・高騰するでしょう。学者が減れば、科学力が落ちて後進国まっしぐらです*2

 「私は使わないから要らない」と言うのは間違い。三角関数を教えないなら使えない人が減って、三角関数を使う技術の代替は自分でしなきゃならなくなる。だから、「私は使わないけど、使える人がいなくなったら困るから必要」と考える方が、結果として期待値が高くなる。スマフォやネットが使えないと困るでしょ。当然、車とか電車の設計もできないから、全部徒歩移動ね。


 教育は国家百年の計なんて言うくらいですから、半径5メートルの感覚で結論を出してはいけないし、ましてや政治家がそんな短慮をするのは全くけしからん話です。
 安保問題でもそうだったけど、SNSで簡単に自分と同じ意見を拾ってこれるだけに、「同じ意見の人にしか通用しない主張」があふれかえってる。追い風となる調査結果や論調こそ、しっかりと吟味していく習慣をつけなければ、個人としても国家としてもいつか手痛い報いを受けることになりそうですね。

関数とはなんだろう―三角関数から複素関数・超関数まで (ブルーバックス)

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三角関数指数関数対数関数―知っておいてほしい関数たち

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*1:高等学校教育:文部科学省

*2:学者に関しては現状で多すぎると思うので、個人的にはもうちょい減ってもいいかと思います

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